定尺度による音の大きさ評価実験を行い、男性は女性よりも同一音圧レベルの音を「小さい」と評価することを示した。また調整法を用いた実験においても同様の結果を得た。一方、ME法による実験を行い、半分、2倍、3倍、...の大きさであると感じる音庄レベル差に男女差は存在しないことを明らかにした。比較音を基準音の「半分」、「2倍」の大きさに調整するマグニチュード産出法を用いて検討したところ、「2倍」の条件においてME法と同様の結果が得られた。これまでに指摘されている音の大きさ知覚における男女差は、音の大きさを「小さい」「大きい」など言語を用いて表現する場合の感覚量に生じる男女差であり、音庄レベル差に基づく比率尺度で表現しうる感覚量の差によるものではないと考えられる。
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Recentlycommerci commercial spaces have been increasingly important for us to enjoy not only shopping but also leisure、amusements and social communication. It is one of the reasons why the creation of more desirable environment of commercial spaces is demanded. The major objectives of this investigation are to detem血eevaluation items which have effects on the desirability of commercial spaces、and to construct an evaluation model in which those items are interconnected hierarchically and causally. In the fast experiment、with the participants of 25 university students、the evaluation grid method was used to select evaluation items、and then 17 items were extracted. ln the second experiment、24 out of the above participants evaluated the audiovisual stimuli of 12 commercial spaces with the semantic differential (SD) scales of those 17 evaluation items (observed variables). As the results of the graphical modeling (GM) and structural equation modeling (SEM)、it was found that evaluation items of "quiet"、"cleanliness of road" and "appropriateness of BGM" have the most significant function in the desirability of commercial spaces.
東海地方にある2つの特別養護老人ホーム(施設A:ユニットケア・全室個室、施設B:従来型のケア・個室と多床室の混在する施設)の協力を得て、2つの調査を行った。施設内の騒音レベル・音源の記録を行い、施設で暮らす高齢者をとりまく音環境の現状を明らかにすることを試みた。また、ケアスタッフ(施設A: 12名、施設B: 14名)を対象として、認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)と施設内の音環境に関わるインタビュー調査を行った。調査の結果にもとづき、施設で暮らす認知症高齢者のBPSDに音環境が及ぼす影曹について検討し、ケアスタッフが経験則として気づいている点・配慮している点をまとめ
平地・盛士(壁無し)、高架橋区間(直墜)の3箇所で実測した在来鉄道の近接車両および遠隔車両における騒音分布をもとに、鉄道騒音の伝搬計算に2次元の波動数値解析手法を適用する際の音源のモデル化について検討した。その結果、地上高さ25 m程度まで騒音レベルを精度よく予測するには、高さl.2m~10m範囲の複数点を参照点に設定するべきであることが分かった。また、車両下部に配置する音源はレール頭頂面高さで車両端2点に設置したケースが最適と考えられる。
音場解析の効率化手法として提案している可変グリッドCIP法を3次元解析に適用し、計算精度および計算コストを検証する.この手法は、解析空間の一部領域を周辺領域より細かく離散化するサブグリッド手法を応用し、計算過程で音波の伝搬に合わせてサブグリッド領域を動的に設定しつつ解析を行う.自由音場における址礎検討の結果、可変グリッド手法により計算精度を保ちつつ計算メモリと計算時間を大輻に低減できることを示す.また、解析対象となる音場の規模と可変グリッド法の計算効率の関係を検討し、大規模音場への可変グリッド法の適用が効果的であることを示す.地形や建物を含む屋外音場の3次元解析に可変グリッドCIP法を適用し、音場全体を細かく離散化した場合と比較して同程度の計算精度であることを示す.計算コストを比較すると、本報で示した解析例では、計算グリッド数は約1/4、計算時間は約1/5である.
音の吸収線量(人体に吸収される音量)と睡眠影響、張力影響及び基礎代謝への影響について考察する。放射線、電磁波の吸収線量と人体影響との関連とも比較言及する。
本研究では、障壁に対して非鉛直方向から到来する音の回折減衰量の特性を解明することを目的とする。前川チャートは、障壁による音の回折減衰量の簡易計算法として広く用いられているが、音が障壁に対して非鉛直方向から到来する場合、実際の空間とは異なる障壁を仮定して計算している。そこで、障壁を設置した3次元空間の音響数値解析を行い、音の入射角が変化することで、減衰量がどのように異なるか検討した。また、解析結果より、周波数と音の入射角からなる回折減衰量の補正式を提案する
本稿では、EnsembleAveraged Surface Normal Impedance測定法(EA法)の基本的な測定メカニズムと低吸音性材への適用可能性について報告する。材の吸音特性の測定法については、既に多くの手法が提案され、そのいくつかは規格化されている。しかし、波動音響数値解析の境界条件として要求される不確かさの範囲に収まる精度のデータベースは不足している。さらに既存の手法では、波動解析で主眼とする100 Hzから1000Hzの周波数領域の吸音特性を、特にin-situで測定するには困難を伴う。それらを克服するものとして提案されたEA法の測定原理について、まず、有限要素法の吸音モデリングとの関連から、EA法が材表面の吸音性状の代表的な特性を、入射事象のアンサンブル平均として求めていることを数理的に明示する。また、3種原さのグラスウールを対象とする境界要素シミュレーションにより、アンサンブル平均が、単一音源の場合に不可避な材端からの反射・回折波の影響を、効果的に排除することを確認する。最後に、低吸音性である屋外のコンクリート路面やアスファルト路面、および、屋内廊下のビニルタイル床面の吸音特性を、EA法によりin-situ実験で複数回求め、管内法の測定値と比較した。今回の実験では、EA法により求めた吸音率の周波数特性の傾向が管内法の結果へ十分近似し、かつ、得られた吸音率の不確かさが0.03以下の範囲に収まった。すなわち、EA法が屋外測定を含む低吸音性材のin-situ測定へも適用可能であることが示す一例と考えてい
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To evaluate community response to a step change to aircraft noise exposure associated with the launching of a new terminal at Hanoi Noi Bai International Airport、a social survey including three rounds of face-to-face interviews is going to be implemented. The first round of interview was conducted in September、2014、three months prior to the opening of the new terminal、while the second round is planned to be carried out in February、2015、two months after the start of operation. The achieved outcome of the first survey indicates that the exposure-response curve of Hanoi Noi Bai was fitted onto EU's curve below 55dB Lcten・ However、% Highly Annoyed by aircraft noise is markedly greater than the EU's result above 55dB Lcten・ Additionally、the %Highly Annoyed of this survey is 5% lower than the result obtained in 2009 survey.
航空技術の進展により航空機の低騒音化が実現しつつある現在、我が国の主要空港では、空港容量拡大ニーズに伴う環境面の変化により、これまでにはなかった問趙等が発生している.これらの間題解決の指針等を得るには、諸外国の対策対応の現況や事例等を把握することも重要である.そこで、本稿では海外の主要空港における航空機騒音間趙の現状及び政策対応等を把握するために、欧州3都市(仏・蘭・英)の運輸省及び、空港会社等の騒音対策担当者を訪間してヒアリング調査を行った.その結果、騒音苦情は、AMSを除く2空港(CDG、LHR)が我が国同様、遠方からの騒音レベルの低い地域からの苦情が大きな間題であった.いずれの空港も、解決の具体的指針等は得られておらず、様々な騒音低減運航方式の試験的運用や騒音評価指標の再考、情報公開等により解決策を模索中である等が分かった
研究では市販のデータを使わず精度とユーザビリティを兼ね備えた建物の居住者数推定手法を提案する.本手法は、基盤地図情報の建築物データをベースマップとし、5段階の住居系/非住居系の判別を実施し、戸建住宅と集合住宅非住居系建物に分類する.各段階では公的機関が公開している地理情報やGoogleMapsを用いている.その後各種統計データより、建物の居住者数を推定する.岡山市を対象に本手法を適用したところ、戸建住宅は良好に判別できているが集合住宅の判別力漢佳しいことがわかった.
般的な遮音壁では、量産化などの面から壁全体に1種類の吸音パネルが配置されている。しかしながら、遮音壁に要求される吸音や遮音の音響性能は壁内で異なるため、壁内の配置場所に応じて、異なる音響性能を持つ吸音パネルを配置することで遮音壁の最適設計が可能となる。本報では、吸音パネルの透過音に注目し、壁内における吸音パネルの最適な配置場所を明らかにした。最適解の定義は、評価点における騒音レベルの目標値を達成し、重量をベースとした総スコアが最小となる吸音パネルの組合せとし、全数検索により最適解の算出を試みた。
:コンサートホール音場の後期反射音がもたらす聴覚的効果には、時間的側面を表す'残讐感(聾きの長さ感)'(Reverberance、REV)と空間的側面を表す‘音に包まれた感じ'(Listenerenvelopment、LEV)がある。本研究は、後期反射音による聴覚的効果を特徴づけるもう一つの切り口として‘響きの質感'(Textureof reverberation、TRV)を定義し、これがホール音場で知覚される音像の質的側面を表す要素感覚として有効であるかどうかについて検討するものである。本稿では、後期反射音の時間分布密度と残響時間を独立に変化させた刺激音場を用い、響きの印象に関する非類似度実験並びにTRV、REVの心理的尺度値を求めるための一対比較実験を実施した。これらの結果から、(i)TRVの説明を受けた被験者グループはTRVを有意に知覚できること、(ii)後期反射音の時間分布密度の変化がTRVの知覚に弁別可能な影響を与えること、(iii)聾きの印象評価においてTRVはREVと異なる評価軸となることを示した。
:環境省「騒音に係る環境基準」は、道路に面する地域の騒音達成状況を甚準値を超過する建物の戸数や割合によって評価することとしており、またすべての建物について騒音レベルを測定することは困難であることから騒音を推計することも認めている。この騒音推計には建物群による騒音減衰量を求める必要があることから、筆者らは、直線這路だけでなく曲線道路にも適用可能な“点音源モデルに基づく戸建て住宅群による道路交通騒音減衰量の予測法F2012’'を提案した。F2012は、ASJRTN-Model 2013にも採用されている。F2012は、音源点から予測点に伝搬する騒音の建物群による減衰量△LBを、直接音E小r、反射音Eref、1次回折音Edif、l、その他Edif、2のエネルギーの総和から求める計算式となっている。しかし、各エネルギーの計算に必要な騒音予測パラメータの算出は必ずしも簡単ではない。特に、Eref、E山f、1は、EdirやE山f、2に比べると値が小さいにも拘わらず、それらのパラメーターの算出は煩雑である。そこで、本報では、E巾rとEdif2のパラメーターだけで△LBをどの程度予測できるかについて検討した。
れまでの研究の結果、木造床において、畳を剥がし測定を行うと、そ
の荷重の変化により、測定値が変化する結果が得られた。また人荷重により影響が生
じる事例もある。本報では、木造建築物における木質仕上げの床の振動測定に及ぼす
影響について検討する。 FEMによる数値実験や、測定事例から、人荷重が測定結果
に及ぼす事などを町らかにしている。
水性舗装(高機能舗装 I型)路面は吸音特性を有することから、
排水性舗装路面上の騒音伝搬においては地表面効果による超過減衰が生じる。し
たがって、排水性舗装の道路交通騒音予測の精度向上においては、排水性舗装で
の超過減衰を把握しモデル化する必要がある。ここでは、舗設後 1年 4ヶ月経過
した自動車専用道路において、スピーカを用いて排水性舗装路面の音曹特性や伝
搬特性を測定した。その結果、音源からの距離が離れると超過減衰が生じており、
また自動車走行騒音のユニットパターンにも同様な超過減衰の傾向がみられた。
平成 25年 4月より、改正航空機騒音に係る環境晶準が施行し、 評価指標が WECPNLから Ldenに変更され、測定や評価の方法が大きく変わる ことになった。これに伴い環境省は測定結果の信頻性を担保するために、統一 的な測定・評価の方法・考え方を示した「航空機騒音測定・評価マニュアル」 を公表した。これに晶づき国内各地の空港周辺で新しい基準による騒音観測が 行われてきたが、改正晶準の施行後 2年弱が経過し、さまざまな要因が測定結 果や評価値に影響を及ぼすものとしてあらためてクローズアップされている。 筆者らは単発騒音算定時における課題や短期測定結果に見づく長期間評価値 の信頼性について報告した I、2)が、さらに、測定マニュアルでは説明不足や明 確でない点を含め、評価鼠の信頼性に影脚を及ぼす要因について追加検証する ことにした。本報告は、測定地点における信頼性を担保できる測定環境の考え 方や単発騒音算定における課題などについて検討したものである。
橋梁のコンクリート裏面の空隙部や浮き部をロボットを用いて 点検する技術について韮礎的な検討を行っている。ベークライトの円柱板(直 径 120mm) 上にマイクロホンを 5本設置し、その上に G W(64kg/m2 厚さ 46 mm) を被せ、マイクロホン後方からの反射音の影聾を低減し、音源方向を示す ことができる音源探査装置を試作した。無響室において、マイクロホン後方に 設置した障壁の有無にかかわらず、音源探査装置がおおよそ音源スピーカの方 向を示すことがわかった。次に、壁からの反射が想定される場所の柱近くに音 源探査装置を設置し、タイル表面を検知棒で加振し、柱表面のタイル刹離を検 知できること、コンクリート内部の空隙や浮きについても模擬試験体を用いて 音源方向を検知できることを示した。
公共交通機関での音声放送について、視覚障害者、音に対して過敏な人、他 の利用者の 3つの視点からの評価を検討した.その結果、視覚障害者の評価のうち、視 覚障害者にとって必要な放送に対する評価と、音に対して過敏な人の評価は対極にあり、視覚障害者にとって必要ではない放送に対する評価は、他の利用者のそれらの放送に対 する評価と一致すると整理された.また、一部の放送に対して、3つの視点からの評価 が共通する場合がみられた.そして、公共交通機関でユニバーサルな音声放送を実現す るためには、視覚障害者にとって必要な放送が流されるべきであり、それ以外の放送は 流されるべきではないと論じた.
道路交通振動を含む環境振動が地盤から建築構造物への伝搬と 建築構造物内の伝搬のメカニズムを明らかにすることを目的とし、地盤から建 物への振動伝搬の距離減衰性状を把握する。
地盤振動伝搬に、建物による影響があるのか、建物からの距離別に距離減衰 性状を把握し、考察する。また、地盤から建物内部への振動伝搬を、加振点か ら測点までの水平距離を採用し、考察する。建物内について、特に高振動数域 において、振動モードの影響を強く受け、測定値にばらつきが生じる。振動測 定を評価するためには、測点位置の選定が重要と考えられるため、大きな振動 が発生しやすい場所を選定する方法をここでは考える。
木造床は、RC 床などと比較すると、重量が軽い。このため、人荷重
により、測定結果に差が生じると考えられる。また、剛性も弱いため、振動モードに 関連した振動レベル分布的な減衰性状では無く、加振点からの距離に依存する傾向を 示す可能性がある。木造床については、RC 床と同じ測定・評価方法で良いか不明で ある。本報では、実測による実験により、これらの影響について考察を行う。この結果、人荷重などによる影響や、振動評価として望ましい測定点について示している。
本研究では、道路形式の代表例として平面道路と高架道路の 2 つを取り上げ、 大型車両が道路上を走行した際の地盤応答最大値の発生メカニズムについて、 「地盤加振力」と「地盤伝播」の関係に着目して考察を行った。平面道路交通 振動においては、地盤加振力が移動することで生じる応答波形の包絡形状と、 路面上の局部段差に起因する地盤応答の増大の組み合わせで、地盤応答最大値 が発生することが分かった。一方、高架道路交通振動においては、地盤加振力 は高架橋の構造や車両が走行する車線位置の影響を大きく受け、隣接する複数 橋脚基礎部を加振点として同時に伝播する非定常振動の重ね合わせにより、地
盤応答最大値が発生することが予想された。
騒音下におけるインクジェットプリンタの動作音の印象を一対比較法を 用いて調査し、従前のレーザープリンタの場合と同様、背景音の存在によって印 象が変化することを確認した。また、レーザー方式の場合に有効であった指標が インクジェット方式に対しても有効であるかを確認したところ背景音のあるインク ジェット方式では良い対応を示さなかった。そして、マスキングを考慮したマスク トラウンドネス Np が動作音に対する印象を説明するうえで重要な要素と考え、そ の時間率 (95% 値) レベル、 Laea の増分、変動強度の3つの指標の線形和で表され る評価式を得た。評価式は本実験で得られた印象と比較的高い相関を示した。
地球温暖化等の影響により、局地的、突発的な集中豪雨や竜巻
と言った極端気象現象の発生頻度が増加していると言われている。昨今、その ような現象による被害もたびたび報告されていることから、それら現象の発生 や発達過程のモニタリングを行うことは重要である。そこで、そのような現象 の検知や発達過程の解明を、それら極端気象現象が発する音を活用して実施す ることを目標に、その第一歩として、関東平野において試験的なアレイ観測を 実施した。2014年7月から11月にかけて実施したその観測において落雷によ るものと思われるインフラサウンド・シグナルを多数検知した。既存アレイ観 測施設にて得られたデータをもあわせ解析することで、音源である落雷発生地 点推定の可能性が明らかとなった。
前稿において音波による人体影響について検討するため体表面及び耳による吸音量の推定を試みた。その後、修正すべき点が多々見い出された。本稿では耳の伝達構造についてより詳細な考察をいこない、内耳の音量(内耳に伝達される振動エネルギー)を再度推定し、加筆及び修正を試みた。
広域放送システムからのアナウンス音の明瞭性確保に関する研究として、設計支援ツールとしての完成を目指している可聴型予測システムの精度に関する検討をはじめ、広域放送システムのスピーカ配置に関する検討、アナウンスの音源信号に関する検討を行った。予測システムの検討としては、6ch。収音-再生システムの正中面内下方向の定位実験と仮想実音場との明瞭性評価の比較実験を行った。放送システムのスピーカ配置に関する検討としては、1つのスピーカのサービスエリアを狭くする方法に関するシミュレーションと聴感実験を行った。音源信号に関する検討としては、アナウンスの話速やポーズ長をパラメータとした聴感実験を行った。
防災行政無線の屋外拡声システムは、災害等からの避難情報を不特定多数に一斉送信する方法として非常に有用であるが、以前からロングパスエコーによる明瞭性の低下が指摘されてきた。この明瞭性の低下を評価するためには、エネルギーマスキングのみを考慮した既存の物理指標では難しく、種々の両耳効果を考慮する必要があると考えられる。そこで、本研究では、直接音の両耳間差とロングパスエコーの両耳間差の差に着目し、これにより両耳効果が音声了解度に与える影響を説明できるという仮説を検証した。実測調査を基に防災行政無線の屋外拡声システムを模擬した音場で、直接音とロングパスエコーの提示方向の組み合わせをパラメータとした音声了解度試験を行い、スペクトラルキューが含まれない場合であれば、仮説は成り立つことを示した。
大島らは、防災拡声放送の長期間観測結果から放送音の聴こえが気象条件によって日々変化すること、親局から発信される電波信号と観測された音波信号の相互相関関数のパターンと気象条件が密接に結びついていることを報告している。本報告ではこの多数の相互相関関数のパターンをディープニューラルネットワーク(DNN)の入力情報として学習させ、気象パラメータ(風向、風速、温度、湿度など)を直接推定する方法を検討した結果を報告する。
音響数値計算による実在地域の屋外騒音伝搬の予測手法を確立することを目的に、これまでハイパースペクトルデータを用いた地表面種別の同定方法、地表面インピーダンスを考慮したFDTD法の適用を進めている。そこで今回は、マクロモデルをベースとした騒音伝搬予測ソフトウエアHarmonoiseによる計算結果と比較することで、提案手法が妥当であるか検討した。その結果提案手法は、建物の形状による遮蔽および地表面による超過減衰を考慮して計算できることが確認された。
公共空間の音環境の予測・再現を目指し、背景音である雑踏音に着目した可聴化シミュレーションシステムの開発を行った。システムは音線法と6ch音場再生系から構成される。音源は歩行者の足音・話声と空調音を想定して空間内に配置し、足音・話声は移動を模擬した。実在する公共空間を本システムによって模擬した結果、騒音レベル及び賑やかさ・音の大きさ等の聴感印象が実音場と概ね一致した。また、条件を変化させた空間を本システムにより作成し、比較実験を行った結果、うるささ・音の大きさの印象は騒音レベルと対応した一方で、残響感は残響時間との明確な対応が見られず、騒音レベルに影響を受けている可能性が示された。
本研究では、コミュニケーションの有無が環境音や音源側の評価にどのよう な影響を与えるかについて検討を行った。実験参加者 20 名に対して、40 種類の環境音を 17 個の7段階 SD 尺度で評価してもらった。実験条件として、 環境音を発する相手とコミュニケ
ーションがある場合とない場合の 2 条件を設定した。その結果、音および音源側のどちらの
評価においても、 2条件間で迷惑感に関わる尺度で顕著な差がみられ、コミュニケーション
がある場合の方がない場合よりも、迷惑感が低くなる傾向が見られた。続いて、評定尺度値 をもとにクラスター分析を行ったところ、環境音は 5 つのクラスターに分類された。因子分 析では「迷惑感因子」、「音量因子」、 「美的因子」が得られ、刺激ごとに因子得点を算出した ところ、全クラスターを通して、ほとんど全ての刺激において、音源側とのコミュニケーシ ョンの有無が音および音源側の評価に影響を与えることが示された。また、全体的に「音量 感」が大きく感じられた刺激は「迷惑感」も大きく感じられた一方で、音圧レベルが十分低 く「音量感」が小さく評価されても「迷惑感」が大きく評価された刺激や相対的に音圧レベ ルが低くても「迷惑感」が大きく評価された刺激も見られた。したがって、単純に音圧レベ ルの大小では「迷惑感」ははかれないことも示された。
本論文では連続体が境界において変位加振を受ける場合 に、その変位加振を等価な力加振と固定の境界に置換して解析する方法 を提案した。提案手法を用いると連続体が境界で変位加振を受ける場合 にもモード解析を適用することができるようになる。本論文では連続体 として一次元音響管とはりの曲げ振動を取上げた。これらを代表として 取上げた理由は、前者は支配方程式が波動方程式で、後者は4階の微分 方程式で与えられ、本質的に異なるためである。本論文では、強制変位 を境界条件として与えて解析する従来法と提案手法とをシミュレーシ ョンで比較し、提案手法の有効性を確認した。
超音速飛行体から発生する騒音は衝撃波を伴う激しいものであ り、通常はそのために地上での超音速巡航は禁じられている。このことは、航 空機が高速で飛行する事によるメリットを大幅に削ぐものである。
この様な状況を緩和するための一方策として、 プラズマアクチュエーターを プラズマ源として超音速噴流中に挿入し、それによるスクリーチ騒音特性の変 遷についての調査を試みた。その結果、プラズマ添加によって音圧レベルが低 下することが判明した。 この際、電源周波数によって周波数分布にピークが生じるという懸念は有っ たものの、誘電体が消耗・損傷しやすい高周波条件(20kHz超)でも既存のシ ステムでの実験は可能であり、 ピーク周波数は可聴領域外となった。また、電 源ON/OFF の時間を半々 (Duty比50%)にしたところ、 連続 ON (Duty比 100%)
に比して更なる騒音低減効果が確認できた。
α線、β線、γ線、x線等の放射線は人体に多大な影響を及ぼすことはよく知られている。また、電磁波の影響についても携帯端末の爆発的普及によりしばしば話題に上がるようになった。さらに音波については睡眠や聴力をはじめ各種の影響が知られている。本稿では放射線、電磁波及び音波による人体影響の概要を述べ、相違点や類似点について比較、検討する。これらは何も人体に吸収されるエネルギー(吸収線量)に起因する現象である。
無人で航空機騒音を測定する際、同じ機種の航空機が上空通過 しても飛行コースによって騒音レベルがばらつくことがあり、また、航空機騒 音の識別を行う際も、上空からの音か地上からの音かを判別するためにも、音 の到来方向を推定できるシステムが必要となってくる。本稿では、 3 つのマイ クロホンを用いて音の到来方向を推定する方法を提案し、現地調査にてその推 定精度を確認した。その結果、プロペラ機を除くほとんどの航空機で実際の飛 行コースとよく一致した結果が得られた。
歯科治療時に発生する騒音は、高周波数帯域にピーク周波数成 分を持つことが原因となり、多くの患者や医師に強い不快感を与えている。 本 稿では、我々がこれまでに提案してきた聴覚マスキングに基づく歯科治療音の 不快感低減手法と楽曲付与と聴覚マスキングに基づく歯科治療音の不快感低 減手法について説明する。さらに本稿では、「歯科治療音の快音化」という新 たな着想の基、快音である音楽理論における和音のスペクトル構造および時間 構造に着目し、時間・周波数領域の和音構造付与に基づく快音化手法を提案す
る。最後に主観評価実験を実施し、提案手法の有効性を確認した。
著者は既に、障壁のエッジ近傍に生じる非常に大 きな粒子速度(エッジ効果)を適切に抑制することで、回折 領域における音場を効果的に低減する手法を提案し、道路交 通騒音等に対して 10 dB 程度の減衰効果が得られることを理 論的に示し、実験的にもその効果を確かめた。本手法を用い たエッジ効果抑制型遮音壁は既に製品化され、騒音対策の現 場で利用されるようになって来ている。これまでの理論的な 検討では、遮音壁本体は剛なものとして扱ってきたが、実際 に利用されている道路用遮音壁等は音源側の面では吸音処理 が施されていることから、本稿では、遮音壁本体の音源側表 面を吸音性にした場合の減音効果に与える影響について理論 的検討を試みた。また、エッジ効果抑制のために用いる薄い 吸音層の高さと減音効果との関係についても検討した。
気体や微細径の霧化液などを固まりの状態で搬送する手段として「渦輪」技術 が有り、「空気砲」と称して科学実験などで離れたところに空気等の固まりを 直接搬送する場面が紹介されている。
近年、映画等のアミューズメント設備では映像の 3D 化に伴い、視聴者に立体 的映像の提供が行われており、更に匂いや音を提供する手段も求められている。
渦輪搬送の一手段としてスピーカ構造を利用した専用加振器を開発し、且つ 前記加振器を低騒音で駆動させるための手段の実現で、尾引きの少ない渦輪の 1m以上飛行と、32dB(A)以下の騒音値を実現した。
音楽制作で用いるミキシングの技術を応用し、騒音下で音声の内容 の聞き取りを向上させる手法を提案する。 ミキシングの手法として、 我々が開 発したスマートミキサーを用いる。 スマートミキサーは、 新しい音信号混合法 で、 入力信号の時間周波数平面同士の非線形で時変な重ねあわせを実施する。 これにより、両信号を阻害せず聞き取れるようになる。 スマートミキサーを応 用し、騒音のスペクトルや音量に対応した強調方法を実施することで、 最適な 聴感音量で音声内容が聞き取れる手法に取り組む。
ユニバーサルデザインに配慮した視覚障碍者のための音案内に関する考察である。 公共トイレの音案内に対象を限定し、無意味音声を基調とした音響案内および多言語同時再生 の音声案内による男性/女性用トイレの識別の可能性を検証した。 評定尺度法を用いた心理実 験および文章了解度試験をおこない、 男女の識別を目的としたトイレの音案内という事前知識 があれば、いずれの方法も高い確率で男女の識別が可能であることを示した。
近年、保育ニーズの高まりに伴い保育時間が延長され、室内環境の充実が必 要とされる。その一方で特に都市部においては、緊急性をもった保育施設拡充 対策により、十分な用地確保ができず、外部騒音による影響が懸念される保育 施設も増加している。本研究では、幹線道路沿いに立地する保育施設を対象に、 外部影響も含めた室内における音環境を把握し、施設計画の検討を行った。そ の結果、外部交通騒音が保育施設内の音環境に与える影響が明らかとなった。 また、交通騒音が室内の音環境に与える影響において、室内レイアウトが作用 している可能性が示された。
本報は地方中核都市である熊本市域の認可保育所全数を対象と して実施した視察およびアンケート調査の結果の第一報である。調査した保育 所数は 132 園、保育士から得られた回答は 2130 サンプルである。視察の結果、 保育室のクラス境界について、固定壁など遮音性の確保された形態は半数程度 であり、可動間仕切や1室を複数クラスで使用するなどの形態があとの半数で あった。また吸音材が使用されている保育室は 13%にとどまった。アンケート の結果では、会話コミュニケーションが増える3歳児以上を担当する保育士に 会話のしにくさや喉の痛みの回答が多くみられた。担当する保育室の吸音材の 使用や室間の分離により、そうした問題が軽減される可能性が示唆された。
保育空間における音環境改善に向けた吸音材の効果の検証事例 の蓄積に加え、後付けで吸音処理を行う際の、保育空間・ニーズに適した吸音 材設置手法の提案を目的に、音の響きが長い保育園のランチルームと、幼稚園 の保育室を対象として吸音材(ポリウール)を設置し、効果を調べた。吸音材 の設置は簡易的に取り付け・取り外しが可能な方法によるものとし、空間の印 象を損なわないよう保育者の意見を取り入れながら実施した。吸音材の効果を 確認するために、設置前後で室内音響測定、使用時の音環境調査、保育者への 意識調査を行った。
乳幼児期の子どもの中でも低年齢である 0-2 歳児の保育場面での 音環境のあり方を探ることを目的として、子どもの発声行動と子ども・保育者 のかかわりに着目して実態調査をおこなった。その結果、低月齢児は発声頻度 が少なく主に泣き声で欲求をうったえること、満 2-3 歳になると子ども同士の 会話が増え発声音量や発声頻度が増大すること、など発達段階によって発声の 仕方・頻度・大きさが異なることが示唆された。また、保育者の細やかな対応・ 声がけにより音環境が調整されうることが示され、中でも子どもへの声がけに おいては、言葉の内容の他に「声の大きさ」「語り方」といった保育者の姿自 体が重要な意味を持つことが示唆された。
保育園や幼稚園では、リズムあそびやリトミックといった音楽 活動が必ず行われている。5園を対象に音楽活動の実際を調査したところ、そ の進め方や手法は様々であり、身体を鍛えることに主眼を置く場合と音楽に合 わせることを目指す場合、歌を歌うことを主とする場合などが見られた。また 問題点として、音楽活動を行う部屋の音環境が適切でない場合が多いこと、ピ アノを使うことが非常に多い割に、それによって生じる問題も多いことなどが 見出された。これらを踏まえ、ピアノを用いず、音に耳を傾けさせる音あそび プログラムを構築し実践したところ、子どもからも保育士からも好評を得た。 今後は音楽活動が行われる音環境と共に、音楽活動の内容にも配慮する必要が ある。
鉄骨造デッキプレートスラブにおける床振動性能の予測を目的 に、面内面外変位連成型有限要素法(以下、連成型 FEM)による振動応答解析 を検討した。はじめに、鉄骨造デッキプレートスラブの減衰性状に関して実測 調査を行い、減衰特性値の傾向を確認した。続いて、鉄骨造デッキプレートス ラブの振動応答に関して、実測された減衰特性値に基づき、連成型 FEM を用 いてスラブ断面ならびに鉄骨梁を再現した解析モデルにより検討を実施した。 振動応答の解析結果について、実測結果との比較検証を実施した結果、標準重 量衝撃源ならびに歩行加振による応答振動に関して、実測による傾向との概ね 良好な対応を確認した。
スポーツ関連施設のデッキプレート合成スラブの振動特性を測 定し、有限要素法による数値解析と比較した。測定結果より、デッキプレート 合成スラブの1次固有振動数は、7Hz~13Hz の範囲にあった。損失係数は、0。01 ~0。5 の範囲にあり、周波数に比例する傾向が見られたもののデータ数が少な く断言はできない。歩行時の振動応答は、建築学会の居住性評価では、ピッチ 歩行時は、V-70〜V-90 の範囲にあり、事務所としての振動性能は許容範囲であ った。小梁を考慮して FEM 固有値解析を行った結果、一例を除き実測値の 0。8 ~1。3 倍の範囲となり概ね一致していたが、振動応答解析は、ピッチ歩行時の
結果に誤差が生じており、解析時の加振方法に検討の余地がある。
日本にマッチした情報公開のあり方を明らかにすることを目的 として、その基礎的知見を得るための第一段階として諸外国及び日本における EMS 導入状況調査を行った。その結果、世界の主要空港では web による情報 公開システムのように、オンデマンド方式によるものが増えていることがわか った。 一方で、 CDG のように、特定の場所でのみの公開方法や、成田空港にお ける電光表示板のように、実際の状況を体感しながら、現状を確認することも 有効な手段であること分かった。
地方都市3都市(長野市、松本市、上田市)と、大都市3都市(横浜市、名 古屋市、大阪市)の小中学校を対象に音環境に関するアンケート調査を実施し 更に GIS による学校周辺状況を検討し以下の事が確認できた。
大都市では、住居系、商業・工業系、田園・山間系のすべてで、地方都市で は主に住居系で音に関する意見が寄せられていた。地方都市・大都市ともに第 一種住居専用地域で音に関する意見が寄せられる割合が大きかった。半径 500m の周辺人口が 1、000 人を超えると意見を音に関する意見が寄せられる傾 向があった。
風速や温度の鉛直分布により生じる音速分布は、屋外騒音伝搬に顕著な影響を 及ぼす。このような気象影響に対して、これまでフィールド実験や波動性を考慮した数 値解析による検討が行われてきている。実際上問題となる、航空機、自動車、鉄道車両 などの音源は、それぞれ特有の指向性を有するが、多くの検討では、音源は無指向性点 音源として単純化されてきた。我々は、この音源指向性の影響に対して、屋外実験およ びGreen's Function Parabolic Equation法 (GF-PE法)を用いた検討を行ってきた。本報告で は、GF-PE法において任意の音源指向性を取り扱う方法について述べ、提案する計算手法 の妥当性を実験結果との比較によって確認する。
Long-range outdoor sound propagation is strongly affected by meteorological effect due to vertical distribution of wind and temperature. Many researches have been made on the long-range outdoor sound propagation by field measurements and numerical analyses. Although noise sources outdoor including aircrafts、automobiles and railroad trains are directional、many studies assume omnidirectional characteristics as the sound sources. Focusing on the effects of source's directionality、therefore、the author has been investigating the effects of the source directionality on the long-range sound propagation. In this paper、a directional sound source will be dealt with by using the Green's Function Parabolic Equation (GF-PE) method. Numerical method introducing the directivity characteristics of the source for the GF-PE method is described firstly、and the validity of the proposed method is confirmed by comparisons between the calculation results and the experimental ones.
時間幅の短い超音波パルスを送信し、計測対象から反射したエコ ーの時間遅れから対象との距離を計測するパルスエコー法による、路面上の障害 物の検知・判別について検討を行っている。まず、周囲の騒音など環境雑音の影 響を低減するため、 M系列を用いたパルス圧縮を適用することでエコーの信号対 雑音比を向上させる手法を提案している。しかしながら、受信した信号には障害 物からの反射波に加えて、路面の細かい凹凸からの反射波も含まれており、それ らの判別が困難であった。 本報告では、アスファルトのようなランダムな形状を 持つ路面からの反射波を計測し、その基礎的な性質について評価を行う。
過去 20 年間に、新幹線鉄道沿線の住宅地で別個に実施された7回の社会調査 により得られた騒音暴露量と社会反応の個票データを用い、新幹線鉄道騒音 の暴露反応関係について二次分析を行った。本稿では、暴露量として、現行 の環境基準で規定されている最大値ベースの評価量とエネルギーベースの評 価量(昼夜騒音レベル)を用いた。社会反応としては、総合的な被害感(ア ノイアンス)に加え、生活妨害(聴取妨害や休息妨害)、睡眠妨害の反応も用 いた。これらの評価量と社会反応を用いて作成した暴露反応関係を提示する とともに、新幹線鉄道騒音の評価量として最大値ベースとエネルギーベース のどちらが適しているのかを議論した。
新幹線鉄道から発生する騒音や振動とアノイアンスとの関係は 曝露-反応関係により検討されるが、居住環境の評価には様々な要因が影響す る。そのため、それらを包括的に捉えることができれば生活環境改善のための 物理量を低減すること以外にも方策を検討できる可能性がある。本研究は 2003 年に行われた福岡県での社会調査と 2013 年に行われた長野県での社会調査を 使用して新幹線鉄道騒音と振動による複合的な被害感を捉える構造方程式モ デルを構築することを目的とする。構築したモデルの適合度は CFI が 0。947 で あり、RMSEA が 0。047 であった。このモデルにより複合被害感への影響要因 を検討したところ、建具のびりつきに対する評価の影響が相対的に最も大きい ことを示した。
原資料は SASDA 登録の CR06 と RT08 で、在来線鉄道騒音と道 路交通騒音に複合曝露された地域のデータである。戸建と集合住宅を含み、戸 建では鉄道と道路による振動も実測されている。住民は複合騒音曝露下にある
実態を踏まえ、ロジスティック回帰を用いて分析している。原資料 1358 人中 の複合曝露条件に合う 1157 人を対象とし、鉄道騒音と道路騒音による合成ア ウトカムの概念を導入し、鉄道と道路の交互効果、戸建と集合住宅の比較、振 動の影響について検討している。 DALY を試算し騒音負荷の重大さを指摘して いる。鉄道運行本数倍増効果を諸々のアウトカムについて dB 換算し、夜間運 行本数増加と睡眠妨害存在率増加との関係を試算している。
欧州では、2002 年のEU 騒音指令以降、飛行場周辺も含めた騒音マップが 作成されており、それに基づいて健康損失などの影響評価が行なわれている。しかし、 我が国では、騒音対策を目的とした騒音コンターは作成されているが、具体的な健康 影響の評価は行なわれていない。本研究では、嘉手納飛行場周辺の夜間騒音を対象に、 短期間の目視による飛行経路実測結果と1年間の騒音実測値に基づいて、1年間の全 ての夜間飛行経路を推定するとともに、飛行場内からの地上音の評価も試み、地上音 を含めた夜間騒音コンターの推定を行なった。さらに、推定された騒音コンターに基 づいて、飛行場周辺における騒音による健康影響に関して、各種疾病の有病者数や死 亡者数、DALY(障害調整生存年)などの算定を行なった。その結果、嘉手納飛行場 近傍では、睡眠障害、虚血性心疾患、脳卒中、高血圧等により、航空機騒音に起因す る公害病として、無視できない健康損失の生じていることが明らかになった。
近年、道路交通騒音の伝搬計算において利用されている 2。5 次元 数値解析(時間領域有限差分法を基本とした 2。5D-FDTD 解析、及び境界要素 法を基本とした 2。5D-BEM解析)を用いて、平地鉄道を対象に在来鉄道の車両 下部音の伝搬解析を行った。車両下部騒音の伝搬解析において、周波数領域に おける解析手法である 2。5D-BEM 解析と過渡応答の積分変換に基づく 2。5D-FDTD 解析の2つの解析結果は互いに良く一致した。吸音性境界を取り扱 える 2。5D-BEM 解析と比べて、2。5D-FDTD 解析は反射性境界しか扱えないが、 車体と防音壁間の多重反射音等の顕著な音波の伝搬状況を明確にし、それらの 寄与を応答波形上で把握することに役立つことを示した。また、縮尺模型を用 いた検証実験の結果から、2。5D-FDTD 解析は縮尺模型実験との整合性が良く、 2。5次元解析が車両下部音の伝搬解析として有用な手法であることを確認した。
ヴァイオリン構造における振動エネルギーの伝搬メカニズムという観点から、 機械構造物の振動騒音設計に活用するための研究を行っている。本報では、ヴ ァイオリンの駒構造に着目し、弦から駒構造を介してヴァイオリン胴体部に振 椎動エネルギー転換するメカニズムについて考察するために、実験データ に基づく統計的エネルギー解析法(SEA)によるヴァイオリン本体の振動エネ ルギー伝搬解析を実施し、よりよいヴァイオリンとしての三つの要件を得たこ とを報告する。また、要件の一つである「表板への入力パワーの周波数分布は 1/5F 分布に近い は周波数)」ことは、駒構造の一方向振動伝搬を示唆する ことから、この振動伝搬メカニズムについて検討したことを報告する。
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This paper aims to investigate the subjective structure and corresponding objective indices for soundscape in urban shopping streets via field surveys and a laboratory study. Using the semantic differential method、the perception structure of shopping street soundscapes was initially analysed、and five major perceptual factors were identified. A laboratory study was then performed to investigate the relationship between perceptual factors and physical indicators. Sound levels、psychoacoustic indices and a new index (dynamic spectrum centre or DSC) were considered. The results showed that sound level and psychoacoustic indices were useful in describing three perceptual factors (preference、loudness、and communication)、while DSC values had significant correlations with the other two factors (richness and playfulness).
飲食店などの多群会話空間では、複数の話者の会話音による環境 騒音レベルの上昇や残響のため、会話の明瞭度においては会話しにくいと評価 されることがある。一方で、適度な喧騒感や残響感は自他の音声をマスクし、 自分達の会話が他者に聞こえる、他者の会話が自分達に聞こえるといったスピ ーチプライバシーにおいては会話しやすいと評価される場合もある。本研究で は、多群会話空間での会話しやすい音環境条件を明らかにするために、実験室
において残響時間、初期反射音、SN 比を変化させた音場を呈示する主観評価 実験を行った。その結果、空間の印象への音響要因の影響及び、会話しやすさ の評価において、会話の明瞭度の許容値の一部が明らかになった。
老年性難聴や時間分解能の低下などの影響を受ける高齢者にと っての音声明瞭度について、物理的な予測の可能性を検討するために高齢者と
対照群としての学生を被験者とする単語了解度試験を実施した。明瞭度指標に ついて、残響と SN 比の影響を評価可能な STI と、その二つに加えて聴力の補 正が可能な SII を取り上げた。この両者について単語単位での指標値を、残響 時間、SN 比、聴力を順次考慮して算出し、各指標による試験の正答率予測の 適合度を、ロジスティック回帰分析により比較した。結果として、全体では SN 比を考慮した STI の予測精度が高い一方で、条件によっては聴力補正を行った SII の予測精度が高くなるなど、高齢者の聴力を考慮した明瞭度予測について、 妥当な指標を検討するための基礎的なデータが得られた。
日本国内では街地や建物内のバリアフリー化が、国や地域をあ げてより一層進んでいる。しかし、 バリアフリー整備の進展にもかかわら ず、その設置状況に関する情報が局所的・断片的である場合、利用者は情 報入手が困難な状況が発生し、設備や情報を利用できないことがある。そ こで、本研究ではバリアフリー整備状況の情報の提供・共有のあり方に関 する手法の検討の一環として、音や音環境のバリアフリー整備を対象とし
た、スマートフォンを用いたアクセシビリティマップの作成を試みた。
沖縄県の米軍基地に所属する航空機は、離発着の際に 100dB 近 い騒音を発生させ、近隣の住民の生活に多大な影響を与えている。これを受 けて、米軍は負担軽減のため、訓練移転等を行い、飛行回数の削減を行って いる。しかし、依然として騒音は大きく住民の不安と怒りは大きい。
日本では、昭和 48 年より、航空機騒音に係る環境基準として WECPNL(荷重 等価平均感覚騒音レベル)を採用していたが、平成 25 年度より、新環境基準 として Lden が採用されている。米軍はこの環境基準の時間に合わせて飛行時 間の制限等を約束している。 沖縄県本島には 2012 年 10 月から MV-22 オスプ レイと呼ばれる輸送機が現在までに 24 機配備されている。このオスプレイが 飛行する際に発生する、低周波音による振動と騒音が現在大きな問題となって いる。
2014 年度に普天間飛行場周辺において低周波音調査を行った。 1-80 Hzまでの 1/3 オクターブバンド周波数分析を行った結果、MV-22 オスプレ イは 20 Hz におよび 40 Hz に卓越周波数がみられた。1/3 オクターブバンド音圧 レベルの中央値を「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書」で 示された環境保全の目標値と比較すると、物的影響の保全目標値は測定対象と した全ての機種で超過がみられ、心理的影響の保全目標値については MV-22 オスプレイで超過がみられた。室内では騒音が大きく低減されるため、低周波 音に対する騒音によるマスキング効果が薄れるために低周波音を知覚しやす くなる可能性が示唆された。